美味しい匂いのする本 3選

出産してから縦書きの文字が全部記号の波に見えてしまって読めないという事態に苦しんでいたのだが、ここ数週間で急に読めるようになったので本を読み漁っています。読める!読めるぞ!
ということでブクログなる読書記録アプリに登録したんだけど、「テーマに沿って3冊本を選んで紹介してください!」みたいな機能があったのでウキウキで選書して文章まで書いたら「紹介文は200文字以内じゃないとダメだよ~んwww」と言われてしまった。ああ俺の1500文字。

いや大したこと書いてないんだけど流石に捨てるのも悲しいのでここに置いておく。どう考えても200文字でおもしろさを伝えられるわけないだろ

 

 

テーマ「美味しい本」

美味しい匂いのする本 3選

紙に絵や文字が書いてあるだけの平面から、何故か存在しない“匂い”が感じられる本3選。

 

 

しあわせのパン 三島由紀子

2012年公開、大泉洋原田知世主演映画のノベライズ本。
当時大泉洋所属劇団TEAM NACSの追っかけをしており、彼のことは5人中5番目に好きだったが、映画出演に先駆けてノベライズを読んだ。が、これが面白くて結局映画を見ないという最悪パターンを辿ってしまったのだ。いや、本人は「イメージを壊したくなかった」と供述しており、、、

北海道の田舎町で夫婦2人が営む宿兼パン屋「マーニ」に、色々なものを抱えた人々がやってくるという物語。
読んでいるとあの夏の北海道の、暑くもサラッとした気候を肌で感じられたり、焼きたてのパンの香ばしくてほんのり甘い匂い、淹れたてのコーヒーのほろ苦くて香ばしい匂いが、何故か本から漂ってくる。2人がさまざまなゲストに食事を振る舞うシーンは、存在しない“美味しい匂い”を肺いっぱいに取り入れたくて思わず深呼吸してしまう。

またこの夫婦が優しくて、いつもタイトルが「やさしさのパン」だったかどうか混同してしまうほど(嘘です)

そして、どうしてこの「マーニ」は存在しないのか、本気で思い悩んで枕を濡らしたほど(本当です)

 

 

 

 

 

きのう、何食べた? よしながふみ

弁護士の筧史朗(シロさん)と、美容師の矢吹賢二(ケンジ)の2人の生活を描いた日常漫画。

40歳過ぎ(※連載開始時)のゲイカップルである2人の人生を描いた作品なのだけど、このシロさんがまぁ敏腕主夫。冷静沈着で仕事のできる弁護士だが、ひとたび職場を出れば、夕飯の献立をいかに安く美味しく作るか?を考え、スーパーをハシゴし、味や見た目のほかカロリーなどの栄養面も考慮しながら夕食を何品も作っていく凄腕シェフもといシュフ。そのレシピのどれもが今すぐ真似しやすいような、親しみのあるものばかりで、わりと細かく書かれているので参考にしやすい。さらにそれを明るくて“オネエ”で愛嬌のあるケンジが美味しそうに頬張るものだから、胸はいっぱいになるし、お腹は空く。

近年流行りのファンタジーみたいなキラキラ同性愛描写はなく、ただ2人が、時々リアルな困難や苦悩に直面しつつも、「美味しいね」と顔を突き合わせて笑うような、身近で幸せな日常がある。美味しいご飯は好きな人と食べると更に美味しいよね、というのを具現化した漫画。

ずらっと並んだおかずたちから、“食卓と幸せの匂い”を感じてほしい。

 

 

 

 

 

ひとめあなたに…  新井素子

一人称視点と砕けた口語体で綴られ、「ライトノベルの先駆け」とも言われる新井素子が描くSF小説。1981年初版。

物語は女子大生である主人公が、一方的に恋人に別れを告げられるところから始まる。傷心も束の間、「1週間後、地球に隕石が衝突する」という報道で、世間は壊れ始めていく。全てが狂っている街中を、恋人に会うため練馬から鎌倉にかけて歩こうとするのだが、その道中に出会う人々がまた狂っていて……という話である。

そして、1番最初に出会う人が作っているのがビーフシチューなのである……が。

あたし、ちょっと新井素子風に謝りたい。“美味しい匂いがする本”という名目で最後にこの本を出してしまった。その、ズルというかなんていうか、もちろん自覚はしてる。この作品から“美味しい匂い”がするかどうかは、読んでるお宅の感性によると思うーーというか、しない人が大半かもーー。もし、読んで美味しい匂いがしなかったとしても。そのときは、怒らないでほしい。

作品自体はとても面白いし、私はこの本を現在アラ還である母から12年ほど前に譲り受けたのだが、この一冊の本との出会いが当時中学生である私の人格形成に大いに影響を与えたほどの内容ではある。“美味しい匂い”がするかどうかはともかくとして、是非一度読んでほしい。まぁ本から何かしらの匂いはすると思う(?)