風のなかに立つ

担降りしてからずっと書こうと思ってたのに、いつのまにか最初で最後になってしまった。
いつか、って一生来ないな。

 

まぁしかし「人間、どこでどうなるかわからない」とはよく言ったものでして、私の短い人生の中でも何度か身を持って感じることがあります。高校時代、ドイツ語の曲なんてもう二度とやらねえ!と心に決めるほど苦戦したのに、数年後、大学の実技試験で歌った自由曲はドイツ歌曲だったりとか。そもそも歌も、小学校の学芸会でミュージカルの主演をやらせてもらい、中学上がって合唱部に勧誘されるも断り続け、しかしひょんなことから見に行った演奏会に感動して帰り際に「私来年から入部するわ」と言い放ったあの日から数年、気づけば大学で声楽を専攻しています。どうしてこうなった。

趣味に関して言えば、2015年8月18日はまさにその言葉が、まるでパズルのピースのようにすこん、と当てはまる日でした。ジャニーズジュニアのコンサート、ガムシャラサマーステーション決勝戦。ガムシャラでは、連日開催されるコンサートの中で、我・武・者・羅・覇の5チームに別れたジュニアたちが、フリースタイルバスケやダブルダッチなどのパフォーマンスを披露し、もっとも優れたグループをファンたちが決めるという企画が行われていました。決勝戦は、前述のうち上位3チームのみの出演であり、私が当時好きだったジュニアは全員予選落ちした2チーム所属。「誰を見ればいいんだよ!?!?!?!」と至極落ち込みながらも旅行先の山梨からそのまま六本木に向かう私。

開演し、ジュニアがわらわらと登場。しかしながらお気に入りの子はいないため、「うんうん、みんなかっこいいね~~」と小学生並みの感想を心の中で綴るだけで。そして各々、ファンサしながら歌うジュニアたち……。と。そのなかに一人だけ、ダンスしている人が。みんな歌いながらファンサしていて、まともに踊っていやしないのに、一方その子はまるで「踊ることがファンサなので!」とでも言いそうに、誰より嬉しそうに楽しそうに、華奢な体を使って踊っていた。ちょっと濃いめの醤油顔と、骨と少しの筋肉と皮しか無さそうな体型、誰よりも無駄がなくてキレがあり綺麗でかっこいいダンス。名前と顔は知っていたけど、そのとき初めて存在を意識した。高橋颯くん、それが彼の名前でした。
颯くんの顔と体型とダンスが好みドストライクであった私は、終演後には「颯くんヤバイ好き」しか言わないbotと化していた。顔も体型もダンスも、どれも自分内評価オールAな彼についてもっと知りたくなって、雑誌を漁った。
「踊ることが僕の人生」「ジュニアは踊ることが仕事だからダンスがうまくなきゃダメだと思ってる」「自分が心から楽しく踊ればきっとパフォーマンスにもでるしお客さんにも伝わる」……そんなことをさらっと言えてしまう高校生。かっこいい以外の感情がでてこない。この人以上に中身も、外見も、パフォーマンスも好きな人は今後出てこないと思う。こんな人間になりたい。そう思わせてくれた始めてのアイドルだった。そしてきっと最後のアイドルだと思う。


この春から、今の場所を離れて違う道へ進むことが本人から明言された。正直悲しいのだけども、新しい道を選択した彼を引き留められない。これだけかっこいい彼が見据える未来が輝かないわけがないから。彼の選ぶ道はいつだって正しいのだと思わせてくれる説得力がある。正直彼はステージで輝くために生まれてきた人だと信じて止まないし、これを書きながらもう二度と見れない可能性が高いということを思いだしてしまって本当に悲しい。もしいつか、表舞台に舞い戻ることがあるとしたなら、そのときは是非また応援させてほしい。その日が来ることを、ほんの少しだけ期待している。人生はどこでどうなるかわからないから。